生理不順

 生理不順とは、生理周期が一定しないことをいいますが、最近変わってきたという場合は要注意です。ホルモンの異常や、卵巣機能の低下など何らかの不調が潜んでいることもあるからです。中医学では、おもに、次のように分類して、お薬を選び、周期をととのえます。

早くなるタイプ

■気虚タイプ

 漢方の気は必要な血や水分を体に留めておく働きがあるので、エネルギーの足りない「気虚」タイプの人は、それを留めることができず生理が早く来てしまうことがあります。生理の色は薄めで、水っぽかったり、異常に多くてさらさらしていることが多い。生理前、だらだらと不正出血することも。

 ほかに、胃腸が弱くて胃もたれや下痢をしやすい、疲れやすい、むくみやすい、生理中は眠かったりだるい、風邪をひきやすいなどの症状もよくあります。貧血、黄体機能不全、不正出血(色が薄い)、低体温などが起きやすい。 無理な運動や仕事・寝不足など、疲れをためるのは禁物。暴飲暴食で胃腸に負担をかけるのも×です。

 漢方では、「補気」のお薬を中心に利用します。補中益気丸、十全大補湯、帰脾錠など。

■熱過剰タイプ

 漢方の熱はホルモンの機能を亢進し、血液を早く流すと考えるので、「熱過剰」タイプの人も、生理が早くきてしまうことがあります。生理の色は濃い目の赤で、量は多い場合も少ない場合も。

 ほかに、ほてりやのぼせ、のどが渇く、あつがり、怒りっぽい、イライラする、黄色いおりもの、性器の炎症などの症状もよくあります。不正出血(色が濃い)、膣炎、生理前のにきび、皮膚の炎症、PMSなどが起きやすい。辛いもの、コーヒー、アルコール、こってりした食事は熱症状がひどくなるので控えめに。

 漢方では、「清熱」や「補陰」のお薬を中心に利用します。涼血清営顆粒、温清飲、瀉火利湿顆粒、瀉火補腎丸など。

遅れるタイプ

■血虚タイプ

 漢方の血は卵巣の機能に大きく関係するので、「血虚」タイプの人は、卵胞を育てるのに時間がかかり低温期が長く、また、卵胞が変化した黄体もあまりよくなく、高温期は短くなる傾向があります。生理の量は少なく、色もうすめ。

 ほかに、手足が冷える、顔色がくすんだ感じ、肌や目・髪が乾燥する、めまい、たちくらみ、筋肉がつる、便秘がちなどの症状もよくあります。黄体機能不全、子宮内膜がうすい、繋留流産などが起きやすい。 「血」を消耗する夜更かし、目の酷使などは注意。レバー・にんじん・プルーン・赤みの魚など赤い食品や黒ゴマ・黒豆・海藻など黒い食材がおすすめ。

 漢方では「補血薬」を利用します。婦宝当帰膠、四物湯など。

■痰湿タイプ

 漢方の湿は、体内にたまると、「痰湿」となり、血行やホルモンの機能を邪魔すると考えるので、「痰湿」タイプの人は、周期もかなり長くなりなかなか高温に移行しないことがあります。

 ほかに、疲れやすい、太ったりむくみやすい、おりものが多い、舌に苔がつきやすいなどの症状もよくあります。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、排卵障害などが起きやすい。 こってりしたものや味の濃いもの・水分や甘いもののとりすぎ・冷えは湿を体内にためこむので要注意。

 漢方では「化痰利湿薬」を中心に利用します。桂枝茯苓丸、爽月宝、シベリア零芝など。

■腎虚タイプ

 漢方の腎は、卵巣やホルモンの機能に最も深く関係すると考えるので、「腎虚」が強い人は、排卵がわかりにくかったり、高温にならず一相性(無排卵)だったりします。生理の量は少なめこととが多い。

 ほかに、お腹の冷えや生理痛がひどい、腰痛がおきやすい、下半身や腰がだるくなる、疲れやすい、集中力がないなどの症状もよくあります。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、排卵障害、無排卵月経、無月経などが起きやすい。 無理な運動、疲れ、冷えなどは腎を消耗してしまうので注意。 食事の内容をみなおして、外食やお菓子に偏らないバランスのよい食事も大切です。

 漢方では、「補腎薬」を中心に利用します。参茸補血丸、八味地黄丸、六味地黄丸、海馬補腎丸など。

早くなったり遅くなったりするタイプ

■肝鬱気滞タイプ

 漢方の肝は、血液の流れをコントロールするので、「気滞」タイプの人は、生理周期が一定しないで早くなったり遅れたりしていつくるのかよくわかりません。

 ほかに、イライラしたり気分が変わりやすい、生理前の胸のはりや不調が強いなどの症状もよくあります。高プロラクチン血症、PMS(月経前症候群)、乳腺症などが起きやすい。 ストレスはためこまないように工夫して、香りのよい食べ物、フルーツ、お茶、スポーツなどで気分転換をおすすめ。

 漢方では、「疏肝理気薬」を利用します。星火逍遥丸、加味逍遥散など。