妊娠力を上げる漢方生活

■「元気がでる体の本」 2006.秋号
 体質・状況に応じた妊娠力アップの対策が紹介されました。「漢方では、妊娠するためには、子宮や卵巣はもちろん」、心も含めた全身のバランスが整っていることが大切だと考えます。妊娠力を発揮するためには、おもに3つのポイントがあり、

「元気がでる体の本」 2006.秋号
 □メンタル面でストレスをためないようにすること
 □冷えから体を守り、骨盤内の血流をよくすること
 □加齢による生殖能力の衰えを最小限にとどめる、工夫です。

 

どの面が一番大きくかかわってる?

①心の重荷をおろすストレス対策はこんな人に必要
 □子供のいない人生は考えられない
 □子供がいる友達より、自分の方が劣っている感じがする
 □不妊情報をあちこち集めている、あるいは不妊治療をうけている
 □ストレス過多な生活を送っている。

②骨盤内の血流をよくする冷え対策はこんな人に必要
 □一日のうちのほとんどを椅子に」すわって過ごす
 □冷える場所にいる時間が長い
 □冷えやすい服装で過ごすことが多い
 □冷たい飲食物をよくとる。

③加齢による生殖能力の衰えを防ぐ婦人科の老化対策はこんな人に必要
 □出産年齢のリミットが気になってきた
 □生理周期が以前と変わってきた
 □慢性的な過労や寝不足が続いている
 □食生活が不規則、あるいは偏食しがち。

ストレス対策

 焦りや落ち込み、イライラなどのマイナスの感情は、体のエネルギーである「気」のめぐりを悪くしたり、妊娠に不可欠な「血」を消耗し、妊娠しづらい体をつくり出してしまうともとに。まずは、自分のストレスのもとを見つけ出し、生活や気持ちの持ち様を改善していくことが大切です。

■子供がいない「今」を楽しむ生活を
 妊娠したい気持ちがあると、そのことばかり考えて、「今」を楽しめなくなってしまう人は多いようですが、子供がいなくても自分自身の生活を楽しむことは大切。子育て中にはなかなかできないことを、今のうちにやっておこうという気持ちで。

■達成感のある趣味をもつ
 子供を育てていないことで、寂しさを感じているような人の場合、何か形になって達成感が得られる趣味をもつものよいでしょう。たとえば、家具を手作りする、洋服を縫うなど、プロセスも出来上がりも楽しめるような創作物に挑戦してみては。ベランダ菜園やペットの世話など、生き物と触れ合うのも有効です。

■「女性らしいこと」もやってみる
 仕事が忙しく、ストレスがたまりがちな人なら、まずはできるだけ休息を。また、男性並みに働いていると、女性ホルモンの働きが鈍くなってしまうこともあるので、休みの日には女らしい気持ちになるようなことをするのが正解。おしゃれして夫婦で外食や観劇、恋愛小説を読むなど、自分の中の女性性が引き出されるようなことを選んでみて。

■おいしく食事をするのが一番
 ストレスをためこんでいるなら、まずは、自分が食べたいもの、おいしいと感じるものを優先するのが一番。また、子供がいない焦燥感から自信をなくし、他人のことばかりうらやましく思えるようなときには、心に栄養を与える「血」が不足していると考え、黒い食べ物、なつめ、小麦(全粒粉)、金針菜、ゆり根など、血を補い、精神を安定させる食べ物を。

■ティータイムには、香りがよいお茶を
 香りのよいものには、体のエネルギーである「気」のめぐりをよくする作用があります。ティータイムには、ミントティーやジャスミンティー、あるいは好みの香りのハーブティーなどがおすすめです。また、柑橘系にも気をめぐらせる作用があるので、柚子茶や紅茶にマーマレードなどを加えたものもよいでしょう。

■漢方薬は、逍遥丸、帰脾湯など
 ストレス過多でイライラしやすいときには「逍遥丸」を。体のエネルギーである「気」のめぐりを整えて、心を落ち着かせる作用があります。生活は安定しているのに、妊娠しないことをくよくよ悩んでしまうような場合には、「帰脾湯」で「血」を補い、心の安定を図ります。

冷え対策

 妊娠力を高めるには、なんといっても冷えは禁物。骨盤内の子宮や卵巣が冷えると、血流が悪くなって、「血」が滞った「瘀血」という状態をまねくもとになってしまうからです。また、体を冷やす生活がもとで、体を温める原動力まで低下すると、子宮や卵巣の働きが鈍ってくるおそれも。まずは、普段の生活の中から冷えを改善していきましょう。

■生理中は下半身冷えに注意
 生理が始まると、急に基礎体温が下がることでもわかるように、生理中は、1か月の中でもっとも体が冷えやすい時期。出血とともに、体を温めるエネルギー(気)も体の外に出ていってしまうため、体が冷えに弱くなってしまうのです。この時期の服装や部屋の温度には充分に気を配って。もともと冷え性の人は、生理が始まる数日前から、とくに下半身の防寒対策を始めるとなお効果的です。

■おなかや太ももに熱めのシャワーを
 寒いところで長時間過ごしたり、冷たいものを食べ過ぎたときには、お風呂でしっかり温まって、冷えを早めに体外に追い出すことが大切。生理中など、シャワーだけですませたいときには、おなかやおしり、太ももの内側など、冷えが入り込みやすい部位に熱めのシャワーを当てるのがよいでしょう。足湯も効果的です。

■座りっぱなしはNG
 ずっと椅子に座っていることほど、骨盤内の血のめぐりを悪くする姿勢はありません。血流が悪くなると冷えが体に入り込みやすく、また、冷えていると血流が悪くなるというように、血流の悪さと冷えには相互作用があるので、デスクワークの時間が長い人はとくに注意が必要。一時間に1度は、かるく腰を回したり、ストレッチをするなどの工夫を。

■にんにく、しょうが、スパイスなどを料理に活用して
 冷えを撃退するためには、体の内側を温めることも大切です。体を温めながら血行もよくする食べ物には、にんにく、にら、しょうが、ねぎ、シナモン、フェンネル、山椒、紅花、サフランなどがあります。また、もともと冷え性の人は、冷たいものや生ものの多食もさけて、できるだけ火を通した温かいものを食べるようにしましょう。

■1日1-2回、体を温めるお茶を
 ティータイムには、温かい飲み物が原則ですが、もう一歩進んだ冷え性対策としておすすめしたいのが、体を温める作用を持つ食材やお茶を活用すること。お茶の中では、紅茶がよいでしょう。ここに、しょうがやシナモン、黒砂糖などを加えると理想的。

■漢方薬は、温経湯、きゅう帰調血飲など
 体を温める作用と、血を補いながらめぐらせる作用がある「温経湯」や「きゅう帰調血飲」などがよく用いられます。生理中に冷えると痛む人にもおすすめです。

婦人科の老化対策

 妊娠力は、だれでも年齢とともに衰えていきますが、個人差もあるのが事実。ただし、見た目の若さと子宮や卵巣の若さは、必ずしも比例するわけではありません。また、若いのに生殖能力だけは老化しているというショッキングな例も。実年齢にかかわらず、漢方のインナーケアで、婦人科の老化を予防しましょう。

■生理後-排卵までの生活が大切
 妊娠力を増強するために、もっとも重要なのが、卵胞が発育する生理後-排卵までの時期。卵胞の発育を助けるために、しっかりと眠り、きちんと栄養をとるようにしましょう。生理周期が以前より長くなった(あるいは短くなった)、経血量が以前より減った、など、生理に変化が起こっている場合には、とくに注意が必要です。

■無理なダイエットはNG
 よい卵胞を育てるためには、過激なダイエットや偏食は大敵です。とくに、生理後-排卵までは、良質のたんぱく質やミネラル、ビタミンをしっかりとることが大切。野菜と穀類、豆類などを多種類取るようにすれば、太る心配もないでしょう。

■ゆるやかな運動を
 婦人科の若々しさを保つためには、適度な運動も必要です。あまり激しい運動ではなく、ヨガや太極拳、ストレッチなど、体をゆっくりと動かすものがよいでしょう。

■基礎体温を整えよう
 妊娠力が気になるなら、基礎体温をつけて、体温が高温期と低温期の二相性になっているかチェックしてみましょう。もし、一相性になっていたり、高温期が短い(12日以下)、全体的に体温が低い、低温期と高温期の差が少ない(0.3℃未満)、低温期から高温期への移行に日数がかかるなどの乱れがある場合には、基礎体温を整えることを心がけて。生理周期ごとに漢方薬を替える「周期療法」がおすすめの場合も。

■妊娠力UPに役立つドライフルーツ&ナッツ
 妊娠のために不可欠な「血」を増やしたり、生殖能力を高めるといわれているのが、なつめ、くこの実などのドライフルーツや、ごま、くるみ、松の実などのナッツ類。このほか、黒豆、黒米、黒砂糖などの黒いものや山いもも、妊娠力アップの強い味方です。

■漢方薬は、婦宝当帰膠、参茸補血丸など
 妊娠に不可欠な血を補う作用と、血のめぐりをよくする作用にすぐれ、どんな人でも比較的使いやすいのが「婦宝当帰膠」です。年齢が比較的高め、あるいは20代から生理不順の人、妊娠しない期間が長引いている人などは、生殖力の源である「腎」の機能を高める「参茸補血丸」などが必要になる場合もあります。

男性側の妊娠力をUPさせる3つのポイント

①ちょっとした生活の工夫でスタミナを高める心身の疲れ対策

■休日の休み方を工夫する
 平日は夜遅くまで仕事、土日になると家でゴロゴロ、という男性はとても多いものですが、平日と休日の生活が違いすぎては、逆に体に負担がかかってしまいます。平日の仕事を早めに切り上げて土日に振り分けるとか、思い切って山や海に出かけるなど積極的に休日を楽しむほうがいいでしょう。

■残業は夜より早朝出勤で
 夜遅くまで働くことは、心にも体にも負担をかけます。いっそのこと早起きをして、朝残業をするスタイルに切り替えてみては。

■漢方薬は、補中益気湯、四逆散など
 睡眠や休養が十分にとれずにスタミナ不足になっているときには、「補中益気湯」など、体のエネルギーである「気」を補う漢方薬を。 疲れからイライラしやすくなっているときは、「気」のめぐりを整えて、心を安定させる「四逆散」などが向いています。

②性欲や生殖能力の低下を食生活の改善で食い止める老化対策

■海のもの、黒いものを積極的に食べる
 精力の低下がある場合、基本は「バランスのよい食事」です。そのうえで、ホタテ貝やえび、いかなど海の幸、黒米、黒豆、黒ゴマなどの黒い食品、山いもなど、男性側の妊娠力を高める作用があるものを多めにとるようにしましょう。

■できるだけ早めに寝る
 活力を失っている体には、食事はもちろんのこと、充分な睡眠も大切。とくに、夜更かしは体のエネルギーを消耗する大きな要因になるので、多忙なときは、早めに寝られるよう心がけて。

■漢方薬は、海馬補腎丸、杞菊地黄丸
 性欲や生殖能力の低下がみられるほか、白髪、歯がもろい、眼精疲労や老眼などといった症状があらわれているときには、漢方では「腎」の機能に問題があることが多いと考えます。この場合、よく用いられる漢方薬には「海馬補腎丸」や「杞菊地黄丸」などがあります。

③運動不足や偏食をなくし、血のめぐりをよくする血液ドロドロ対策

■体を動かす習慣を
 男性の血のめぐりの悪さは、毎日の仕事の姿勢と深いかかわりがあります。デスクワーク中心の生活を送っている人は、休憩時にはできるだけ立って体を動かすなどの工夫が必要。仕事の前後や休日には、スポーツを楽しむのもいい方法です。

■食事には野菜やスパイスを味方に
 男性の場合、肉や油っこい料理など、カロリーの高いものばかり食べていたり、そばやうどんなど炭水化物しかとらないなど、食生活にかたよりがある人が多いようです。まずは野菜をきちんととることを心がけてみましょう。また、にんにく、にら、しょうが、玉ねぎ、スパイスなど類には、血のめぐりをよくする作用があるので、適度に取り入れて。

■漢方薬は、冠元顆粒、血府逐瘀丸など
 血行の悪さを改善するためには、「冠元顆粒」や「血府逐瘀丸」など、血のめぐりをよくする漢方薬も大いに役立つはず。運動と食事と組み合わせることが大切です。