更年期障害

 平均して40代後半から、女性ホルモンであるエストロゲンの低下により、生理の乱れのほか、冷えのぼせや、うつ症状、動悸、肩こり、不眠、腰痛などさまざまな症状が出現してきます。また、人によっては、40代に入った頃から不調や変化を感じる人も。

 40代の半ば近くなると、卵巣内の卵胞の大元である原始卵胞の発育できる数が減少し、女性ホルモンも減少、卵胞の発育や排卵・黄体化もうまくいかなくなってきます。すると、生理の量が減る、周期が短くなる、不正出血がおきる、基礎体温の二相の温度差が小さくなりだんだんなだらかになってくる、といった現象がおきてきます。

 一方、命令する脳のほうでは、卵巣の状態を認識せず、減少した女性ホルモンを回復をさせようとせきたてる結果、のぼせ・ほてり・ホットフラッシュ・めまい・イライラなどが起こりやすくなります。

 中国漢方古典でも、女性の身体は、7の倍数で変化すると記載されています。7×2=14歳で初潮、7×3=21歳で女性としての成熟期、7×4=28歳で性機能のピーク、7×5=35歳から徐々に衰えが始まります。7×6=42歳で衰えが早まり、7×7=49歳で閉経と記載されています。これは、現代でもさほど変わりがないようですね。

 このエイジングのスピードは、生活習慣・食習慣などで、かなり変わってきます。日々の気使いとともに、体の衰えのスピードをゆるやかにし、さまざまな症状に対応できる中国漢方は、更年期障害を楽にするだけでなく、更年期以降の健康にも大変役立ちます。

ホットフラッシュがめだつタイプ

 漢方では、女性ホルモンを「陰」と考え、この「陰」は肌や粘膜、体の中の潤いを保ち、適度に過剰な熱を冷ます作用があると考えます。陰が減少するこの時期は、相対的に「熱」が過剰になってしまい、急なほてり・のぼせ・頭部の発汗などが顕著におこってきます。

 「陰」を補う食べ物は、海藻類や貝類、なまこ、いか、あわび、くらげなど海のものや、おくら、山芋などネバネバしたもの。辛いものなどは陰を消耗するので控えめに。

 漢方は、「補腎陰薬」や「清熱」のお薬を利用します。 瀉火補腎丸、天王補心丹、涼血清営顆粒など。

イライラ・ヒステリーが目立つタイプ

 漢方では、「肝」に「血」が充分であれば気持ちも安定していると考えますが、更年期の時期には、「陰」とともに「血」も不足してしまいます。陰が不足すると過剰な熱が生じ、血が不足すると過剰な「気」が停滞しやすくなります。これらの不足と気や熱の過剰から、イライラ・怒りっぽくなる・興奮しやすくなる・不眠・動悸などの症状がでてきます。

 「陰」を補う海藻類、貝類、山芋、おくら、瓜類、大豆製品などのほか、「血」を補うレバー、鶏肉、ドライフルーツ、黒豆、トマト、にんじんなどもおすすめ食材。ミント・セロリなど適度に香りのあるものもリラックス効果がありますが、辛すぎるものは神経を高ぶらせるので、控えたほうが無難です。

 漢方は、熱を除きながら肝の「気」をめぐらす「疏肝薬」や「清熱薬」を。 加味逍遥散、瀉火補腎丸、柴胡加竜骨牡蠣湯など。

うつ・おちこみが目立つタイプ

 漢方では、「肝」や「心」に「血」が充分であれば気持ちも安定していると考えますが、更年期は、よい血も不足しがちです。特にもともと「血虚」体質の人、くよくよ悩む人、ストレスが多かったり何かと気を使う人は、血を消耗して、うつやおちこみ、脱力感を感じることがあります。

 「血」を補ったり気持ちを安定させる食べものには、なつめ、レバー、黒砂糖、ゆりの根、はすの実などがあります。

 漢方は、「養心」や「安神」のお薬を利用します。 帰脾錠、天王補心丹など。

肌の乾燥・痒み

 漢方では、皮膚や粘膜を「血」や「陰」が、潤し栄養を与えていると考えますが、更年期は、これらが急に減少するため、肌をはじめ、喉・陰部なども乾燥したり痒みを感じるようになったりします。雑菌が繁殖しやすくなり炎症が起きることもあります。

 「陰」や「血」を補う貝類、昆布、山芋、豆類、ドライフルーツ、白きくらげ、瓜類、なしなどを日頃から積極的にとる習慣を。

 漢方は、「補腎陰薬」や「補血薬」を利用します。六味地黄丸、八仙丸、杞菊地黄丸、婦宝当帰膠など。

尿漏れ

 女性に多いのは、咳やくしゃみをしたり力を入れたときにもれてしまう腹圧性のものです。西洋医学では、骨盤付近の筋力や内臓の機能低下がおもな原因と考え、漢方では、腎臓や膀胱など泌尿器系の働き・腹部のパワーなどには「腎」がおもに関係していると考えます。この「腎」は、同時に各種ホルモンの分泌をコントロールしている部分で、更年期には急にパワーが落ちてくるのです。

 「腎」の陰や陽を補う海藻類、貝類、黒ゴマなど黒い食品、山芋などネバネバするもの、くるみや松の実などの木の実などがとるとよい食材です。

 漢方では「補腎薬」や「補気薬」を利用します。 海馬補腎丸、参馬補腎丸、双料参茸丸、八仙丸など。

男性の更年期

 女性の体が7の倍数で変化するのに対し、男性の体は8の倍数で変化するといわれています。8×5=40を境に衰え始め、。8×6=48で衰えが加速、8×7=56でそれが顕著になります。多いのは、夜間のトイレの回数が増えたり、排尿の勢いが弱まるなど排尿に関する症状や、性欲減退など性機能の衰えです。

 女性同様、腎を補う食材を日頃からとっておくことが必要です。

 漢方では、体質に応じて「補腎陽薬」、「補腎陰薬」を利用します。 至宝三鞭丸、海馬補腎丸、杞菊地黄丸などです。