周期調節法

 生理になると、脳の視床下部の命令で、脳下垂体から卵胞刺激ホルモンが分泌、卵巣の中では、数個の原始細胞が発育し始ます。生理が終わるころには、1個の卵胞のみが発育して、卵胞ホルモン(エストロゲン)を分泌し始めます。卵胞ホルモンは、生理で剥がれ落ちた子宮内膜の再生・増殖を促進します。(これが卵胞期で7-10日)

 卵胞が成熟すると、分泌される卵胞ホルモンが急激に増加します。脳の視床下部はそれを察知し、脳下垂体からは大量の黄体化ホルモンが分泌します。この作用により、卵胞は卵子を排卵して、黄体に変わります。黄体から分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)は、子宮内膜にある分泌線の働きを活発にして、子宮内膜を安定させます。(これが黄体期で約2週間)

 この変化にあわせてお薬を飲み分けるのが周期調節法で、中国漢方の考え方と、西洋医学の考え方を組み合わせた中西医結合の不妊の治療法です。より早く漢方治療の効果が現れ、妊娠成功率も高くなりました。ただし、周期や基礎体温の状態は、かなり人によって異なるので、体質や体温・病院の治療に応じた漢方の種類・量・飲みかたなど工夫する必要があります。

生理期には

 「活血薬」を中心に活用して、月経血の排出をスムーズに完全にします。生理期には、新しい子宮内膜をつくるために、古い内膜をきれいにはがし、生理血として排出しています。卵巣からの新しい卵子を、いつも新しいきれいな着床環境に迎えられるように、粘膜層の作り直しを繰り返しているのです。

 この時期には、血行を促進する「活血薬」を中心に、子宮内膜をきれいにします。これには、前の周期で役割を終えたホルモンなどの残留を防ぎ、子宮内膜症・子宮筋腫・卵巣嚢腫などを予防する働きもあります。

卵胞期には

 「補血薬」や「滋陰薬」で栄養を充分補充します。卵胞期には、子宮内膜は新しく再生・増殖され、卵巣内では、1個の卵胞が成熟します。内膜に血液が送られ、卵胞から分泌される卵胞ホルモンの作用により、栄養素を上手に利用できるようになります。

 この時期には、「補血薬」や、「滋陰薬」で、卵巣にも子宮にも栄養がたっぷり供給できるようにします。 「滋陰薬」で充分に「陰」を蓄えることは、漢方の「陰陽転化」の理論からも大切であることがわかります。

排卵期には

 「補陽薬」や「活血薬」で排卵を促し、すみやかに高温移行させます。排卵期には、卵巣内の成熟卵胞から卵子が排卵され、卵胞が黄体に変わり、低温から高温に移行します。血中の卵胞ホルモン濃度の増加から、脳は排卵を促したり、さらに黄体ホルモンが血液で全身に運ばれ、体温を上昇させたりします。

 この時期にも、「活血薬」や、エネルギーを補う「補陽薬」でホルモン分泌の連携をよくし、確実に速やかに、排卵・黄体化するのを助けます。

黄体期には

 「補陽薬」で、受精卵が着床しやすくなるよう内膜の条件を整えます。黄体期には、子宮内膜には分泌液が増え、受精卵が着床・養育できる状態になります。子宮内膜への血液の供給が増え、全身のエネルギー代謝も高まるので、基礎体温は低温期より0.3-0.5℃高くなります。

 代謝をささえ持続させる「補陽薬」を中心に活用します。