風邪のあと、なかなか咳が止まりません。
風邪やインフルエンザなどで、のどや気管支に炎症がおきたとき、咳は菌やウイルスを痰といっしょに追い出す役割を果たしますが、炎症は治まっても、粘膜が乾燥し機能が弱ってしまうと、空咳がしばらく続くことがあります。
中医学で考えると、「肺」(のどや気管支・肺・鼻)の気陰両虚のケースがよくあります。皮膚や粘膜のバリアで体を守る力「気」や、粘膜の働きを正常に保つ「陰」(うるおい)の不足で、のどや気管支の機能が弱ってしまっているのです。外気が乾燥する時期は、さらにうるおいの不足が大きくなり、から咳やしつこくきれない痰が続くことがよくあります。
咳が残りやすい方、いつものどのイガイガが気になる方は、「肺」の「気」「陰」を増し、サポートすることで、カラ咳体質の改善が可能です。漢方では「麦味参」などが活用されます。食べものは、長いも・レンコン・ゆり根・ぎんなん・だいこん・はちみつ・白きくらげなどに潤す作用があります。食事にとりいれてみてくださいね。
寝ても休んでもとれないがんこな疲れ、これは、よく聞く副腎疲労?
腎臓の上には、副腎というのがあって、副腎皮質からはコルチゾール、アルドステロン、性ホルモンが合成・分泌されています。副腎皮質ホルモンという言葉は、よく耳にするかもしれませんね。合成副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)は、さまざまな病気の治療に使用され、炎症を抑えたり痛みをやわらげたりします。
その中のコルチゾールは、抗ストレスホルモンともいわれ、生命維持に必須のホルモンです。でも、日頃、ストレスを常に感じていると、副腎が休む間もなくコルチゾールを分泌しているため、やがて副腎自体が疲弊してしまいます。すると慢性のがんこな疲れや鬱っぽさが起きてしまいます。睡眠不足や栄養不足、極端な気温の変化なども副腎が疲れる原因です。
症状としては、慢性の疲れのほか、うつ症状や不眠、起立性低血圧、朝起きられない、記憶力や集中力の低下、寝ても眠気が強い、アレルギー症状の悪化、PMS症状の悪化などがあります。中医学で考えると、エネルギー不足に陥った「気虚」や免疫力低下・各種ホルモン力不足の「腎虚」の症状がよく当てはまります。気になる方は、体質にあった漢方を試してみたらいかがでしょうか。
亀鹿仙や補腎丸とつく処方などは、腎虚対策に活用されます。また、コルチゾールの材料となる栄養や休息も必要です。腎を養うため、ねばねばしたもの、黒い食材がおすすめです。ヤマイモ・長芋・なめこや、昆布・牡蛎・黒ゴマ・黒豆・海苔・黒きくらげなど。その他、鶏肉や魚介類、アジやイワシなどの青魚(オメガ3系脂肪酸を含む)、ビタミンミネラルを含む、野菜・果物・ナッツ類・クコの実・なつめも、補気の働きがあります。逆に控えたほうが良いのは、カフェインやアルコール・加工食品などです。
冬は、季節的にも腎を養うとよい時期、なるべく生活リズムを一定にして、腎の精も少しずつ補充しておきましょう。
涼しくなってから、不眠や気分の落ち込みが気になります。
季節や年齢で仕方ないのでしょうか、治療すべきでしょうか。
秋になると、日も短くなり、朝晩の温度差も大きくなります。夏は、暑さへの対応で体の疲れが大きかったのに対して、秋は、環境の変化に対応する自律神経の疲れが大きくなります。
自律神経は、気温が変動した時の体温調節、ストレスを感じた時の体調調節など、さまざまな微調節に関係します。自律神経への負担が大きくなる時期は、睡眠やメンタルにも不調がでがちです。さらにストレス・睡眠不足などが自律神経への負担を大きくします。
中医学で考えると、この時期よく見られるのは、夏の発汗やストレス過多などから、心機能・精神作用の「心」が疲れ、また落ち着きをつかさどる「腎」とのバランスが崩れる「心腎不交」というタイプです。
「心」(気持ち)は焦り落ちつかず、「腎」(落ち着き)が、疲れて働きがにぶくなって「心」を支えられない状態になってしまいます。のぼせやほてりを感じ、寝つきが悪く、夢が多くなります。動悸や口の渇き・不安感・焦燥感が強くなることもあります。
「心」と「腎」のバランスを取りサポートしてあげることで、メンタル・体、ともに調子が良くなることもよくあります。舌先がいつもより赤くなったりピリピリしたら、要注意ですよ!
秋になって原因不明の微熱が続き、寝つきも悪くなりました。
インフルエンザや感染症などの検査をしても、陽性ではありません。
ずっと解熱剤をのんで様子をみるしかないでしょうか。
中医学では、夏など発汗が続いたあとは、「気」(エネルギー)や「陰」(体液)が消耗して、体が気陰両虚になっていると考えます。「気」はあらゆる体の機能の原動力です。
その不足は、だるさ・疲れ・食欲不振・朝起きられない・めまいなどにつながります。「陰」は体内や粘膜を潤すと同時に、熱を冷まして体温を下げ、気持ちを落ちつけ、よい睡眠を促すものです。不足すると、夕方から夜にかけて、体が熱っぽくなり、寝汗やだるさ・不眠・不安・動悸などにつながることがあります。
夏よく汗をかいた人、日頃体温が高いお子さん、更年期世代、体内が乾燥しがちな高齢者に特に多いですが、夏が高温になっている現代は、誰しもおきがちです。
気陰を補ったり、清熱の漢方の対応で、根本から改善することをおすすめします。また、食べ物で、陰を補うには、れんこん・やまいも・なしぶどう・白きくらげ・ゴマ・キノコ類などもおすすめです。秋の食べ物が多いです。旬のものをいただくのも大切ですね。
のどがべたつき、不快感があります。これが、のどに鼻水がまわる後鼻漏?
朝起きたときとか、上を向いて寝ているときなど、特に気になります。
いつも、のどがべたついている感じで、気持ち悪いです。
鼻水は、主に鼻の穴から排泄され、一部は、少量のどにまわっているといわれています。
健康な人でもそういわれていて、量が多くなければ気になません。
副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎など鼻水の量が増えたり、鼻からの排泄の力が弱いと、
のどにまわって落ちるのがわかるようになります。
口の中がねばねばする、つばが増える、痰の混じった咳がでる、
のどに炎症がおきて声がかすれるなどの不快な症状がおきてしまいます。
のどの奥で炎症が慢性的におきているため、口臭がすることもあります。
鼻水がですぎないようコントロールして、きちんと排泄できるよう、症状に応じた
漢方を試してみたらいかがでしょうか。
狭心症のような胸の痛みが気になります。検査では異常なしといわれたけれど。
狭心症ではないとの診断ですが、痛みがあるのはつらいし不安です。何か原因があるはずですよね。
心臓を取りまく冠動脈の奥深くには、微小冠動脈という細い血管がはりめぐらされ、心筋に酸素や栄養を供給しています。
この微小冠動脈が十分に拡張しなかったり異常に収縮したりすると、胸痛などを感じることがあります。この場合、冠動脈の太い血管は正常なので、心電図・血液検査・エコー・レントゲンなどでは不明となり、微小循環狭心症の疑いといわれるかもしれません。
微小循環狭心症の場合、女性ホルモンの低下が関係し、更年期の女性に多くみられます。30分程度胸痛が続き、運動時も安静時でもおきます。検査しても異常がみつからない、治療を特に必要としない、そんなときは、微小循環に働きかける生薬製剤を試してみたらいかがでしょうか。
起立性調節障害(OD)
ODは、10代前半・思春期の子供に多くみられ、主な症状に、起床時のめまい・たちくらみ・倦怠感・動悸・吐き気・腹痛などがあります。成人になっても、継続することがあります。特に低血圧の人では、長引いてしまうこともあるようです。
起床時には、心臓に戻る血液が減少して血圧が下がるため、自律神経の働きで血圧を上げる必要があるのですが、思春期のお子さんなどでは、自律神経がうまく機能しななかったり、ホルモンバランスの変化などで、血圧が調節できず、脳の血流が低下し、さまざまな症状がおきることがあります。午後になると交感神経が働きだすため症状が軽減し、夜は元気になることも多いです。
中医学で考えると、「気虚」(疲れやすい、めまいや立ち眩みを起こしやすい、だるい、動くのがおっくう、動くと疲れる、食欲がない)「痰湿」(ふわふわしためまい、気持ち悪さ・吐き気・雨天で調子が悪い)
「血虚」(たちくらみを起こしやずい、貧血傾向、疲れやすい、眠りが浅い)の体質と、症状が似ています。食事や生活リズムの見直しや運動のほか、体質や体調ににあわせた漢方を活用すると、早く体調を戻す手助けになりますよ。
温度差に体がついていかない。寒暖差疲労?
気温や湿度、気圧などが変化したときには、自律神経が働いて体がスムーズに対応できるよう、微調整をしてくれますが、変化が大きすぎたり、体に余力がないと、調節が追いつきません。また、春は、緊張することも多い時期で、こうした環境も自律神経の負担となっています。漢方では、下記のタイプの人が、寒暖差で、体調不良を感じやすいかもしれません。
「気血不足の人」(冷え症、低血圧、貧血傾向、疲れやすい人、睡眠不足、食事不規則の人)は、急な血管の収縮や拡張で、脳の血流不足や、汗腺の開閉のエネルギー消耗で、だるさや疲れ、めまい、たちくらみなどがおきやすくなります。
「肝の弱い人」(気疲れする、目が疲れやすい人、PMSひどい人、筋肉がつりやすい人)は、ふだんから筋肉や血管が緊張で収縮しやすく、温度差などでさらにその傾向が強くなり、肩こりや頭痛、体の痛みなどがでることがあります。
血行不良の「瘀血傾向の人」(頭痛・肩こり・生理痛などが起きやすい人)は、血がドロドロで血流が悪いため、さらに、血管の収縮や弛緩の繰り返しで血行が悪くなり、頭痛や肩こり・冷え・むくみなどを起こしやすくなります。
もちろん複合したタイプもありますし、生活習慣も影響してきます。体質をフォローする漢方を活用して整えると、症状は軽減されますよ。
イライラや気分のうき沈みが激しくて生理前、無性にイライラしたりする
イライラは、性格のせいばかりでなく、女性ホルモンの変化、中医学だと、気や血、陰陽のバランスが崩れてしまっているからと考えます。特に女性の生理前の高温期(黄体ホルモンが多い)は、体温も高く、陽気が盛んです。
でも女性は頃血が不足していることが多く、気と血のバランスがうまくとれず、気が余り、
イライラ、体やわき腹の張った痛み、のぼせなどが起きやすくなるのです。
また、生理の後は、気や血を失うので、血の不足から、落ち込みやすくなったり、不安感・不眠が起きやすくなることがあります。
気をうまくめぐらせたり、血を補う漢方で、気持ちや体調をコントロールすることができますよ。